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【OP】ぬくもり( 21 )
ふと目が覚めた。
目の前には見慣れた天井。
ベッドに横になったまま首を動かすと見慣れた風景…自分の部屋が見える。
いつも通り。普段と何も変わらない。
「…」
…いや、決定的なものがなかった。
いつも隣りにあったぬくもり。
他の人よりも暖かい、真冬に暖めてくれる暖炉の炎のような、心地いいぬくもり。
「…っ」
ぎゅっと、いつもぬくもりがあった、今は冷たいシーツのその場所を握る。
たった数か月、1年弱のことのはずなのにどうしてこうも恋しいと思ってしまうのだろうか。
「お前がいないベッドは寒いな」
苦笑しながらシーツを握った自分の手を見つめる。
「…早く帰って来いよい…エース」
当然本人に届くわけのないその言葉は、いつもより寒いその部屋に溶けていくのだった。