作品/小説
【OP】差し入れ( 男夢主×マルコ )
※固定夢主(名前:チル)が出てきます
ほとんどの隊員が寝静まった夜、とある部屋でカリカリとペンの音が響き続けていた。
白髭海賊団一番隊隊長であり、実質白髭の右腕であるマルコは今、書類作業に追われている。
普段なら書類作業に追われることは少ないのだが、先日の島での調達、敵船との戦闘などなど、
色んなことが積み重なった結果、今の現状になってしまったのである。
いつも眠たそうとからかわれるまぶたは眠気でさらに重く、短時間に何度もあくびが出る。
少しずつ休み休み作業していたのだが、さすがに無視しきれないほどの疲れと眠気を感じ始めていた。
もう少しで終わりそうなんだがねぃ、と思わずため息を漏らすと、
「入ってもいいか?」
コンコン、とノックの音とともにドアの向こうから”あいつ”の声が聞こえてきた。
こんな時間にどうしたんだ?と思いつつ「入れよい」と”そいつ”に返事してやると、
カチャリと静かに音を鳴らしながら、”そいつ”が部屋に入ってきた。
「やっぱりまだ起きてたか」
「とっとと作業を終わらせちまいたくてねぃ」
「さすが”一番隊隊長サマ”だな」
少しあきれたように肩をすくめながら話す”こいつ”はチル。
俺が隊長を務める一番隊の隊員であり、この船の薬剤師であり…俺の恋人でもある。
「んで、何しに来たんだよい」
「こんな夜遅~くまで頑張ってる隊長サマに俺特製オリジナルブレンドティーの差し入れをと思って」
そう言って手に持っていたティーカップを机の上に置く。
紅茶からは、書類作業に追われ切羽詰まってたマルコの気分を落ち着かせてくれる、とても優しい香りがした。
自分で調合したオリジナルブレンドティーを淹れる、これは薬剤師であるチルの趣味の一つである。
そのときの気分などで調合が変わるため、飲むたびに毎回違う香りや味を楽しむのがマルコは好きだった。
「今回のは落ち着く香りがするねぃ」
「ああ、だって今回のテーマは”マルコを癒そう!”だからな」
へへん、とでも言うように自慢げに話す。
その様子に(お前ってやつは…ありがとよい)と心の中で感謝を述べ、一口飲む。
口の中にふわっと優しい味が広がるのを感じ、思わず頬をほころんだ。
飼い犬と同じで紅茶も淹れたやつに似るのかねぃ、なんて呑気なことを思っていると、先ほどよりも強い眠気に襲われる。
「わりぃ…そろそろ、限界みたいだよい…」
「ほら俺がベッドまで運んでやるよ、っと」
チルは軽々と俺を抱きかかえると、そのままベッドまで運んでくれる。
チルのぬくもりが心地よく、自然とまぶたが閉じる。
(後で何かお礼しないと、な…)
「ほら着いたぞマル…!…ったく、こうでもしないと休まねぇんだから困った恋人だぜ」
ベッドに着いたことを知らせようとマルコの顔を覗くと、いつの間にか寝てしまったのか、すやすやと寝息を立てていた。
マルコが自分の身体を考えずに無理しようとするのはよくあることなのだが、俺としちゃあもっと身体を労わってほしい。
今回だって俺が”睡眠薬入り”ブレンドティーを飲ませなきゃ、ぶっ倒れるまで作業続けてただろうし…
ベッドの上で気持ちよさそうに眠る様子に、まあ可愛い寝顔に免じて許してやるか、と顔にかかった髪をよけてやる。
そして、家族のために無理してしまう愛しい愛しい恋人の額へ、
「おやすみ、マルコ」
触れるようなキスを落とした。